気づいた人からきれいになれる。

NEW2019.8.28

第4回

私はいつ、女であることが生きづらいと思ったのだろう その1

life style

文・小島慶子

 「女であることは楽しい」「女であることはしんどい」……あなたはどちらですか?どっちもあるなあ、というのが正直なところでしょうか。私もそうです。生物学的に女に生まれてきたことを肯定したいときも、疎ましく思うこともあるし、この社会で女であることを面白く思うことも、悔しく思うこともあります。いずれにしろ、女性であることに自覚的にならざるを得ない世の中は、ちょっと窮屈。メイクもおしゃれも楽しいけど、それは何も〝女〟を楽しんでいるわけじゃなくて、人生を楽しんでいる!と言っていいはずだものね。
 だって女は記号ではなく、ひとりひとり個別のものですから。
 自分が女という存在なのだと人生で最初に自覚したのは、幼稚園に上がったときでした。お遊戯会で、メンドリの役をやったのです。3人の男子が扮した3人の王様が、メンドリに扮した3人の女子の肩に手を置いて、「このメンドリを選ぶ」みたいなことを言うシーンでのこと。3人の王様男子の中に、私の好きな竜ちゃんがいました。私は竜ちゃんに選ばれたかった。だって、接触できるチャンス! だけど私の担当の王様は、違う子でした。
 ちぇ、なんで竜ちゃんじゃないんだよ、自分で王様を選べたらいいのに!と私は大いに不満でした。その時に感じた不自由さは、大きくなって恋愛市場に身を投じた時にますます強くなったのでした。なんで基本、女は選ばれる立場ってことになってるわけ?と。
 幼い私は、王様が意中の彼でないことが面白くなかっただけでなく、白い全身タイツとかくちばしの被り物とか、ぺたんと座って王様に選ばれるのを待つだけのメンドリの役自体に、そこはかとないダサさを感じていました。王様は金色の王冠をかぶれるし、赤いマントをつけられるし、台詞も多いのに、幾ら何でもメンドリ地味すぎだろ。このときにうっすらと「メスってつまらないな」と思ったのが、私が最初にジェンダーというやつを認識した瞬間でした。
 ではお遊戯会で地味なメンドリではなく、プリンセスがやりたかったのかと言えば、一度もやりたいと思った事はありませんでした。
 私はお姫様じゃなくて、面白い役がやりたかった。だから展覧会で、紙粘土で不思議の国のアリスのキャラクターを作るというお題をもらったときには、迷わずイモムシを作りました。変わり者って魅力的、という価値観は一体どこからわいてきたのか、しかし私は生来そのような性質を持っているようです。だけど変わり者はどちらかというとネガティヴな評価をされる事が多く、まして女の子の憧れの役割としては理解されにくいものでした。この辺りから私の「なんで自分がいいと思うものはいまいちウケが悪いのだろう」というモヤモヤが始まった気がします。

こじまけいこ

こじまけいこ/1972年生まれ。エッセイスト、タレント。学習院大学を卒業後、1995年TBSに入社。2010年退社。テレビ・ラジオ出演、連載多数。著書に小説『ホライズン』(文芸春秋社)、『わたしの神様』(幻冬舎)など。エッセイに『るるらいらい』(講談社)など。
現在は、家族(夫と2人の息子)の拠点をオーストラリア・パースに移し、日本と往復する生活。