気づいた人からきれいになれる。

NEW2020.2.20

第6回

「きれいでいなさい」。亡き恩人の言葉が46歳の今、より深いものになった。 その2

life style

文・小島慶子

 メイクも照明もなしで、テレビに映った彼女はなぜあんなに素敵だったのか。親しい人と好きな仕事をしている彼女の笑顔は、加工なんかしなくてもその喜びで私の心を打ちました。テレビカメラは、目を欺くようなきらびやかな世界を映し出すものですが、同時に、人の眼がそうとはっきり捉えるまでに時間のかかる微かなものを、ほんの一瞬で捉えて鮮やかに映し出すこともあります。彼女の笑顔はまさにそういうものでした。
 そして私の恩人が言った「いつもきれいでいなさい」はきっとこのことだったんじゃないかと思うのです。いつも自分にも他者にも関心を持って、何か好きなものを持ちなさい。好きなこと、伝えたいことがあれば人の表情は輝くのだから。どんなにお化粧しても、心が疲れていればその輝きは画面にも映らない。本当にそうだなあと、彼女を見て思いました。
 それにしても、なぜ私たちは美しさにこんなに敏感なのでしょう。こと人の見た目については、視覚的に調和のとれた、性的に魅力のある容貌とそうでないものをすぐに見分けて、いいの悪いのと批評しがちです。特に女性は、小さいころから見た目について強く意識させられることが多かったのではないでしょうか。私も随分長い間、そうした女性への眼差しに縛られてきたし、だからこそ見た目が重視される職業について、少しでもその呪縛から自由になろうと、つまり人に認められて美醜の品定めから自由になろうとしたのですが、当然ながらそれはかえって自分を苦しくしただけでした。最近はミスコンの水着審査が廃止されるなど、女性をモノとして品評するようなことはやめようという動きもありますね。プラスサイズのモデルも活躍しているし、自分の体をありのままに認めようという流れは今後一層強まると思います。今までの「美しさ」と違っても、自分が自分を肯定する気持ちを「私は美しい」と公言しようというムーブメントは、たくさんの人を勇気づけていると思います。

こじまけいこ

こじまけいこ/1972年生まれ。エッセイスト、タレント。学習院大学を卒業後、1995年TBSに入社。2010年退社。テレビ・ラジオ出演、連載多数。著書に小説『ホライズン』(文芸春秋社)、『わたしの神様』(幻冬舎)など。エッセイに『るるらいらい』(講談社)など。
現在は、家族(夫と2人の息子)の拠点をオーストラリア・パースに移し、日本と往復する生活。