気づいた人からきれいになれる。

NEW2020.5.11

第9回

母や姉の言葉に縛られていた自分。40歳で脳内家族は解散しました その3

life style

文・小島慶子

 今は非常事態も収まって、出稼ぎ暮らしにも慣れました。東京では一人暮らしなので、子育て中には忙しくて会えなかった古い友人たちと夜の会食などで縁が復活し、尊敬できる友人や仕事仲間が増えました。すると、困ったときや辛いときには、友達や仲間の言葉をふと思い出すことが増えたのです。いろんな人とちょっとずつ繋がるって、いいものですね。だれかが常駐の脳の番人をするのは、あんまり良くないのかも。それでは頼りきりになって、自分が育たないから。
 大人になると、自分で決めたことの結果を、全部引き受けなくちゃならないことが増えます。決断するのって、やっぱり怖いし、迷いながら歩いていることは昔と同じ。自分一人では答えが出ないときや、だれかに背中を押してもらいたいときは誰にでもあると思います。
 そんなときに思い浮かぶのは、友達とお茶飲みながら話したなんてことのない一言だったり、普段はあまり会わない知人の口癖だったりするのです。名言でも格言でもない、普段の暮らしの中でふと耳に留まった言葉が、私を導いてくれたり、支えてくれたりする。頭の中にだれか一人がメンターとしてどっかり腰を下ろしているのではなく、いろんな人がふと現れては消える感じ。
 一人ぼっちでも二人っきりでもない、出入り自由の世界に住むのが大人になるということなのかもしれませんね。もちろん、恋でもしたら好きな人のことしか考えられなくなるのだろうけれど、そうであったとしてもなお、キラキラ輝く小石のような言葉の数々をポケットにたくさん持っているのが成熟の証なのでしょう。私が口にした何気ない言葉もまた、いつかそんな風に誰かを支えることがあればいいなと思います。

こじまけいこ

こじまけいこ/1972年生まれ。エッセイスト、タレント。学習院大学を卒業後、1995年TBSに入社。2010年退社。テレビ・ラジオ出演、連載多数。著書に小説『ホライズン』(文芸春秋社)、『わたしの神様』(幻冬舎)など。エッセイに『るるらいらい』(講談社)など。
現在は、家族(夫と2人の息子)の拠点をオーストラリア・パースに移し、日本と往復する生活。